【カナダ】ぼくのワーキングホリデイ略歴を書いてみた【バンフ&イエローナイフ】

カナディアンロッキーでガイドとして働いていると、

「どうしてバンフで働くようになったんですか?」

という質問をよくされます。「山や自然が好きで仕方なくてバンフに来ちゃったんですよー」といった答えを期待されてるような気がしますが、僕の場合はちょっと違います。

それに実をいうと、最初からバンフに来たわけではありません。カナダに来るまでバンフという街の存在を知らなかったし、もっというとカナディアンロッキーってどこにあるんだっけ?というレベルでした。

そんな僕がどうしてバンフで働くようになったのか。ワーホリでカナダにいたときの体験振り返りながら書いてみようと思います。

カナダでのワーホリを決めた理由

そもそも何故カナダでワーホリをしようと思ったのか。それはカナダ先住民の狩猟文化に対する興味からでした。

「英語を上達させたい」とか「海外で働いてみたい」なんて気持ちはほとんどなく、カナダ先住民と一緒に暮らして狩猟をする、というちょっと変わった目的です。

理想としてはワーホリ期間すべてを先住民の村で過ごしたかったんですが、一年間働かずに遊んでいられるほどお金は無い。先住民の知り合いもいないのでどこに行けばいいかもわからない。まずは先住民とのコネクションをつくらないと。そのためにはカナダの拠点をつくらないと何もはじまらない。

ということで、先住民がたくさん住んでいるであろう極北カナダの街にいってみることにしました。

MEMO
「なんで狩猟??」という疑問があるかもしれませんが、そこを掘り下げると収集がつかなくなりそうなので、ここでは割愛。いずれ別の記事で書こうと思います。 

 

最初のワーホリ先、イエローナイフ

先住民が多い街として候補に上がったのはイエローナイフとホワイトホース。

両方とも魅力的な街に思えたけれど、もともと興味があったのはホワイトホースでした。文化人類学者の煎本孝先生の本に影響を受けていた僕は、ホワイトホース周辺のアサバスカンインディアンに会ってみたいという気持ちがあったのです。

ところが、現実に目を向けて家や仕事のことを考えると、どうしていいかわからない。今ならカナダの求人サイトを見ればすぐに調べられるけど、当時は外国で仕事を見つける方法なんてまったく想像がつきませんでした。バックパックひとつ持って、とりあえずホワイトホースに行ってみる。なんて選択は、1年という期限付きのワーホリでは賢い行動じゃない気もするし・・。

そんなことをカナダワーホリ経験のある友達に相談してみると、

「わたし、昔イエローナイフで働いてたよ、よかったら紹介しようか?」

という返事が。これは渡りに船だということで、あっさりとホワイトホースを断念。イエローナイフに決めたのでした。

イエローナイフの最初の仕事は、オーロラビレッジというオーロラツアーの会社。

極北の街イエローナイフに行けば先住民と知り合えるだろうと思って働いてみましたが、これが大失敗でした。スラムダンクでいうところの「バスケットの国アメリカの、その空気を吸うだけで僕は高く跳べると思っていたのかなぁ」ってやつです。完全に見通しが甘かった。

オーロラビレッジは、ツアーガイドの7割が日本人のワーホリ、他2割が台湾やオーストラリアなどのワーホリ、残りがカナディアンというワーホリだらけの会社です。

先住民の従業員もいたけれど、都会的な生活をする人ばかりで想像していたような先住民的な先住民とは知り合えなかったのでした。

「おいおい勘弁してくれよ、せっかく仕事辞めてまでカナダに来たのに・・」と絶望的な気分になったものの、収穫がゼロだったわけではありません。

オーロラビレッジで一緒に働く友人の一人が、別のツアー会社で働いていた経験があり、「あそこなら先住民がたくさんいるし、犬ぞり専門のツアーやってるから面白いよ」という情報をくれたのです。

ワーホリとはいえ一度入った会社をやめ、さらに同業他者に移るのは気が引けました。が、ここに居続けても目的は果たせないことは確実・・。ということで、働いてたった2ヶ月でオーロラビレッジからベックスケンネルスに移りました。(なんだかんだ言いつつ理解してくれたマネージャーには感謝です)

 

ベックスケンネルスでのワーホリ生活

ここでの仕事は本当にハードだった。1日の平均労働時間は15時間以上で、4ヶ月間のうち休めたのはたった2日。おそらく、当時カナダでワーホリしていた人のなかで一番働いていたのは僕だと思います。なんの自慢にもならないけど。

と、話はそれましたが、ベックスケンネルスで働いたことで得られたものがふたつあります。

ひとつは貯金。これはもう圧倒的な労働時間があったので、普通のワーホリのひとが1年かかって稼ぐ金額を、4ヶ月で貯金することができました。あんなに働くのはもう二度とごめんだけど。

もうひとつは先住民とのコネクションです。カナダワーホリの目的だったので、お金よりもなによりも嬉しい収穫でした。

ベックスケンネルスが犬ぞり専門の会社というのは先に説明しましたが、会社のオーナーであるグラント・ベックはカナダで有名な犬ぞり師でもあります。

イエローナイフで年に一回開かれるロンジョン・ジャンボリーというお祭りで犬ぞりレースを主催し、カナダやアラスカの犬ぞり師がグラントを慕って集まります。

僕が親しくなったのは、ロジャーという犬ぞり師でした。彼はフォートレゾリューションという僻地の村に住むデネ族の男で、グラントの親戚です。室内では常に半裸で行動し、筋肉自慢をしてくるナイスガイ。

ロンジョンジャンボリーが開かれる数日間、ロジャーは会社の寮に滞在していたので、ぼくが先住民の文化に興味があることを伝えると、

「だったら俺の村に来い、イエローナイフじゃホンモノの先住民の暮らしなんて見られないだろ?いつでも猟に連れてってやるよ。春ならバッファローだな、ホンモノの先住民がホンモノの肉を食わせてやるぜ!」

ドヤ顔で語るロジャー。

ワーホリがはじまって半年、ついにカナダ先住民とのコネクションができたのです。

 

先住民デネ族との暮らしと、バッファロー猟

冬のオーロラ観光シーズンが終わると、すぐにロジャーのいるフォートレゾリューションにむかいました。

4月になって気温が上がりはじめ、雪もだいぶ解けており、猟に出るにはギリギリの時期。ロジャーと他4人のハンターと共に、さっそくバッファローハントに出ました。

現代のカナダ先住民は、昔のように犬ぞりはつかわず、スノーモービルでハントに出ます。片道200キロ以上の道のりを半日かけて走り、バッファローを探します。

スノーモービルなんて現代的なテクノロジーつかって、全然”先住民的”じゃない、と思うかもしれません。ですが、彼らはGPSを使うことなく村から遠く離れた猟場にたどり着き、どこにいるかもわからないバッファローを探すことができるのです。

道があるわけでもなく、ぼくの目には同じような雪原が広がっているようにしか見えない。僕一人だったらすぐに自分の位置を見失い、遭難して死んでしまうような環境、文字通りのWilderness(人の手がはいっていない原始の自然)です。

一体どうやって?と疑問に思うけれど、それこそが彼らが先住民である所以です。

先住民とは、読んで字のごとく、先に住んでいた人のこと。昔から住んでいる土地のことを熟知しているからこそできる芸当。移動手段が犬ぞりからスノーモービルに変わっても、先住民以外には真似のできないことなのです。

僕はロジャーの運転するスノーモービルの後ろに乗っていただけですが、何の目印もない雪原を当たり前のように走るロジャーの背中に、強い尊敬を覚えました。酒を飲みながらの運転だから怖かったけど。

肝心のバッファロー猟ですが、結果は不猟でした。

が、他のチームがハントしたバッファローをもらうことができたので、解体したり、先住民の料理を食べることはできました。バッファローの味は、そんなに美味くなかったです。人間が丁寧に育てたビーフのが断然うまい。味は問題じゃないんですけどね。

さて、雪解けが進み、スノーモービルがつかえなくなってしまったので冬の猟は終わりです。かなり短くまとめてしまいましたが、4週間ほど滞在したフォートレゾリューションを離れるときが来ました。

この村にずっと滞在し続けるという選択もなくはなかったんですが、あまりにも田舎すぎて1ヶ月以上の滞在は僕には無理。

自分は辺境の村で長く過ごすことができないタイプの人間なんだと悟りました。数ヶ月も滞在してしまう人類学者はすごい。

ぼくはもう少し娯楽のある場所で暮らしたい、ということで向かった先がバンフなのです。

(その後何度かフォートレゾリューションに通うことになるんですが、その話はまた別の機会に)

 

バンフでのワーホリ生活

オーロラビレッジで一緒に働いていた友人に仕事を紹介してもらったので、バンフでのワーホリ生活をスタートするのに苦労はありませんでした。

イエローナイフでのガイド経験があったので応用がきいたし、カナダドルの貯金もけっこうあったので、仕事はほどほどにして楽しむことを優先できました。

ロッククライミングをはじめたのもこの時期で、これもカナディアンロッキーを楽しめた大きな理由です。気持ちにもお金にも余裕があったからなのか、カナダでのワーホリで一番楽しく過ごせたのがバンフでした。

 

なぜバンフが一番気に入ったのか?

カナダに来る前、ぼくは東京で働いていました。そこからイエローナイフやフォートレゾリューションといった僻地で過ごしたのち、最終的にはバンフに落ち着いたわけです。

どうしてバンフが一番気に入ったのか。それは自然と人間との距離間が絶妙だったから。

僕は比較的、自然が好きなタイプの人間だと思っています。なるべく自然に近い場所で生活したい。だからこそ自然のなかで暮らしている先住民を尊敬し、憧れを抱いていました。

でも、実際にデネ族のひとたちと暮らしてみた感想は、「ぼくは自然が強すぎる場所に適応しきれない」ということです。

▲腰までしずむ深雪をラッセルし、斧で邪魔な木を切り倒しながら進むロジャー。移動するために何度もこの作業を繰り返します。

バッファロー猟のさなか、先住民の知識や技術のすごさを知ると同時に感じたのは、圧倒的なまでの自然の強さでした。

雪原にはブッシュ(林)があり、ときにスノーモービルが通れないような部分もあります。そんなとき、ロジャーは斧やチェーンソーをつかって木を切り倒して進みます。

そこでは、「自然保護のため、植物を傷つけてはいけない」という、都会的な考えなんて通用しません。ただ、邪魔だから切り倒す。

猟に出るたび、ロジャーたちは無慈悲に木を切り倒していくのに、ブッシュがなくなることはない。それは、人間の力が自然の力に負けているということで、恐ろしいと思うし、素晴らしいとも思います。

そして、そういう土地で生きるということは、「常に自然と戦っていなければいけない」ということだと気づいた時、僕にはそんな堪え性はないし、知識も技術も体力もないんだと悟ったのです。

そういう意味で、フォートレゾリューションで先住民の生き方を続けているロジャーのことに尊敬をせずにはいられない。

バンフが、自然と人間の距離感が絶妙だと言ったのは、僕にとってちょうどいい自然との付き合い方ができるということです。

国立公園として国が管理してくれているから、僕個人が自然と戦う必要は少ない。完全な自然ではないにしても、僕にとってはカナディアンロッキーはじゅうぶんに広く、深いのです。

ちょっと長くなってしまったけど、これが僕がバンフに住む理由です。