この記事は、2019年7月16日におこなったThe Grand Sentinel & Tower of Babelのマルチピッチ連続登攀(敗退)についての記録です。
もくじ
マルチピッチ連続登攀について
Kamiya
※ざっくりとした説明です。クライミング経験者や詳しい人が読んだらおかしいと感じるかもしれません。なんとなーく、のふんわりとした説明なので悪しからず。
では順番に説明していきます。興味のない人はココまで飛ばしてください。
シングルピッチとは
まず、マルチピッチの対義語として、シングルピッチという用語があります。シングルピッチクライミングをざっくり説明すると、以下のようになります。
- クライマーは、A地点からB地点までロープを使って登る
- パートナー(ロープを持ち、クライマーの安全を確保(ビレイ)する人 ※ビレイヤーという)は、つねにA地点にいる
- A地点からB地点までの距離は使用するロープの長さの半分以下(70mロープの場合は30mくらい登れる)
- B地点まで登ったクライマーは、A地点に下降する
上のビデオはシングルピッチクライミングの様子です。5:18あたりでB地点に到達ています。このあと、下にいるビレイヤーがロープをくり出すことで、クライマーはA地点まで下降します。
マルチピッチとは
かんたんに言うと、先に説明したシングルピッチを複数回繰り返すのがマルチピッチです。
- A地点からB地点に登ったあと、パートナーもB地点まで登る
- パートナーはB地点でビレイし、クライマーはB地点からC地点に登る
- パートナーもC地点まで登る
- 上記を繰り返しD地点、E地点と、高度を上げていく
マルチピッチなら、70mロープで、70m以上の壁を登ることができます。つまり、より高い壁や、山でつかう技術ということです。
マルチピッチ連続登攀とは
では今回のテーマ「マルチピッチ連続登攀」がどのような行為かというと、マルチピッチで登る壁を2ルート以上、1デイで登ることをいいます。(2日以上休憩なしで登る場合もある)
「なんだ、ただ壁をふたつ登るだけのことか」
と思うかもしれませんが、これが結構ハードな山行なのです。行動量が増えるので、体力(スタミナ)がいります。そして、スピードも要求されます。
詳しくは、後ほど説明します。
マルチピッチ連続登攀をすることになった経緯など
ぼく個人が連続登攀をしたかったというわけではなく、よく一緒に登っている友人TとMに誘ってもらったのがはじまりでした。そもそも、スポーツクライミングばかりやっているぼくにとって連続でマルチピッチをするという発想自体がありません。
◆◇◆
The Grand Sentinel(5.10d or 5.8)、Tower of Babel(5.7)ともにクライミングのグレードは高くないので、登りに関してはおそらく問題なし。
ただ、駐車場から壁までのアプローチ(距離:約11km、標高差:約800m)で、体力のあるTとMについて行けるのか? また、マルチピッチに慣れていないのでロープワークが遅く、足手まといになるのでは? という部分で不安もある。
「大丈夫ですよ、いい経験になるんでやりましょう」
ホントに大丈夫なんか?と思いつつ、楽しそうな山行であることは確かだし、The Grand Sentinel、Tower of Babelという有名ルートを登ってみたいという思いもある。ということで、マルチピッチ連続登攀をやってみることにしました。
The Grand Sentinelへのアプローチ
The Grand Sentinelへのアプローチは、Moraine lakeの駐車場を起点とします。
駐車場近くのトレイルヘッド(登山口)から、Larch Valley Traiを歩いてSentinel Passを目指し、そこからがれ場を歩いていくと到着です。
距離:約11km、標高差:約800mと、標高差のあるアプローチなのでそれなりに疲れます。
今回は連続登攀が目的だったので、歩行スピードを早めないと間に合いません。普段なら3時間以上かけて歩くトレイルを、2時間で歩きました。(超つかれた・・)
The Grand Sentinelのクライミング
とりつきに到着した時点で、天気は小雨。前日の雨の影響で岩はかなり濡れていた。
5.8のトラッドルートにするか、5.10dのスポートルートにするか。という選択があり、迷った末に5.8のトラッドルートを選択。濡れた岩で高グレードは落ちる危険がある、との判断。
Tがリードで登り、ぼくがビレーをした。
のぼりはじめ、カムをふたつほど決めたところでTの表情に緊張感が。「これホントに5.8か?」とつぶやく。更に数手すすめたところで、完全に濡れている悪いホールドにぶつかる。「これヤバイな、降ります」といい、クライムダウン。
ルートファインディング・ミスでした。5.8ではなく全然違うところから取り付いていたのです。
ここで30分ほどロスしたものの、天気は回復傾向に。5.10dが登れそうなコンディションになってきた。
◆◇◆
あらためて、Tがリードでのぼりはじめます。1ピッチ目(5.10b)を難なくのぼり、次はぼくがフォローでのぼる。ガバが多く、ホールドもわかりやすい。登りやすいピッチに感じた。
が、なにかおかしい。
やけに腕がパンプする。こんなにホールドはいいのに。足もいいのに。息を切らし、腕を休ませながらノロノロと登る。5.10b程度で、なんてダサい登り方なんだと思いながら、やっとのことで終了点にたどりついた。
「次のピッチ(5.10c)、リードします?」とT。
「いや、やめとく。今日、全然のぼれない。リードできる気がしない。」
5.10台をリードできないのは屈辱だった。なんでこんなに登れないのか。結局、残りのピッチはすべてフォローで登った。その全てのピッチで、ハアハアと息を切らしながら、腕をパンプさせて。トップアウトしたときには、疲れ果てていた。
(これから下山して、更にタワーオブバベルを登るのか・・、体力もつのか・・? 無理かもしれない。)
そんなことを考えながら、三番手でのぼるMを待つ。
◆◇◆
Mが登りきったとき、時刻はすでに14時を過ぎていた。束の間、登りきった喜びを味わった後、すぐに懸垂下降の準備をはじめる。
70メートルをバックロープで下降するので、3回の懸垂で降りられる予定だ。まずTがリードで降りる。次にぼく。そのあとにMが続く。
2ピッチ目をおりたとき、ロープがスタック。色々ためしたが、ロープはひけなかった。
「登りかえすしかないね」と、Tが言う。素早く確実な身のこなしで、登っていく。(ぼくにはできない技術。単純にすごい。)
ロープを回収し、全員が下降したときには16時をまわっていた。
「この時間からじゃ、タワーオブバベルは無理ですね。敗退です。」
Tが言った。
今回のクライミングの反省点
今回の敗退原因はいくつかあります。
- ぼくの歩くスピード(アプローチ)が遅い
- 天気と岩のコンディションの悪さ
- 5.8の取り付きミス
- ぼくの登りが遅い
- ぼくのロープワークが遅い
- 懸垂時のロープのスタック
まずアプローチの遅さ。自分なりに頑張って歩いたが、TとMだけならおそらく往復で30分以上短縮していたと思う。根本的な体力の差を感じた。
次に天気と岩のコンディション。ベストではないけど、最悪ではなかった。この程度の濡れなら登ってしまえる強さが必要。
5.8の取り付きミスについては、トポの読み込みが甘かった。登ったことがある人に、事前に聞いておくこともできた。
ぼくの登りの遅さについて。異様なほどパンプした原因は、マルチ特有の高度感・露出感にたいして、心理的にビビってしまい、必要以上にホールドを強く握ってしまったのが原因だと思う。マルチの経験が足りない。
ぼくのロープワークが遅いことについて。リードをしていないので、支点構築もしていないが、セカンドビレイの準備などをもっとスピーディにできたと思う。これも経験をつまなければ。
懸垂時のロープのスタックについて。スタックしないラインを見極めて降りることが重要。(とはいえ、後ろにいたパーティもスタックしていたので、難しいルートなのかもしれない)
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