ガタンガタン、ガタンガタン。
音と振動とともに、列車は北へチェンマイに向かっていく。
西側の席は太陽の熱線で温められ、ビニル張りのシートに座ると蒸れてしょうがない。
風はぬるく湿っていたので、車窓の雨戸は閉めておいた。しかしその雨戸は鉄製で、すぐに熱を発しはじめた。
外国人旅行者はみなアユタヤの駅で降りていったので、車両にいるのは現地人ばかり。半分以上が空席の車内では、乗客たちが思い思いに列車の旅を楽しんでいた。
初老の夫婦は5歳くらいの女の子(おそらく彼らの孫)に車窓からの景色を見せていた。
女の子は景色よりも車内販売のオモチャが気になるみたい。
反対側の席では、お坊さんがタッチパネル式の最新ラップトップでポップミュージックを聞き、その後ろにいる男は大きないびきをかきながら、せわしなく寝返りを打っていた。
そんな車内の様子を見ているうちに、いつの間にか風は涼みを帯びていた。
すでに熱を失った雨戸を引き下げると空はほの暗く、夕日が遠くの雲に滲んでいた。
目の前には田園の鮮やかな緑が広がっていた。
吸い込まれるような景色に見惚れながら、旅の再開に胸が高鳴るのを感じていた。
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